看護師なら一度はしたことがしたことがあるでしょう下肢挙上について記事にしてみました。
血圧が低いとルーチンで下肢挙上をしている人も多いんじゃないでしょうか?筆者も新人の頃、患者さんの血圧が低い時、先輩看護師に「早く足を上げて!」と言われたものです。
ではなぜ血圧が低いと下肢挙上なのでしょうか?そして最近では、下肢挙上の効果があまり期待できないというエビデンスもあります。
今回はそんな下肢挙上について記事を書いてみました。
下肢挙上による血圧上昇効果は一時的?
下肢挙上は「血圧低下時に、下肢を上げることにより血液を脳や心臓へと戻すこと」を目的としています。血液を心臓へ戻すことで循環血液量を維持し、血圧上昇効果を期待します。
血圧が低下した際に行われるのでショック体位と呼ばれます。他にはトレンデレンブルク体位とか骨盤高位とも言います。
血圧が低い→下肢挙上で血液を脳や心臓へ送る→血圧の上昇に期待
といった感じで理にかなっているように思いますよね?しかしこの下肢挙上、実は「血圧上昇の効果が無い」と言われているのです。
正確に言えば「血圧上昇の効果が一時的である」という事で、JRC蘇生ガイドライン2015では
仰臥位で外傷の証拠がないショックの傷病者に対して、受動的下肢挙上を行うことで、一過性(7 分未満)だが、心拍数、平均動脈圧、心係数、あるいは 1 回拍出量を統計学的に有意に改善する可能性がある。
この一過性の改善の臨床的意義ははっきりしないが、受動的下肢挙上による副作用を報告した研究はなかった。
受動的下肢挙上による改善は短時間であり、その臨床的意義ははっきりしないためこの体位は推奨されないが、より高度な救急医療を待っている間のファーストエイドとして、一時的手段として適切な場合があるかもしれない。
と記載されています。
要約すれば「下肢挙上の効果は7分未満」という事で、7分を超えるような血圧低下には下肢挙上の効果が乏しいという事です。
下肢挙上は血圧低下を起こした原因を解決するための、いわば『つなぎの処置』と考えておきましょう。下肢挙上で根本的な問題が解決することはないので、血圧が低下した原因を対処するのが大切であると理解しておく必要があります。
ただ臨床ではショック時に下肢挙上を行うことが一般化している部分もあります。また一時的に下肢挙上を行い、すぐに原因解決を行う医師も多いので、医師から下肢挙上の指示があれば指示に従い、対応することが必要だと思います。
また下肢挙上により血圧の上昇、正確には脈圧や心拍出量の増加があれば「輸液反応性がある」と評価する方法も存在します。受動的下肢挙上(PLR)という方法で、下肢挙上によって循環動態の変化を評価し、対応を考えるという方法も知っておくと良いと思います。
透析中の下肢挙上はあり?
下肢挙上により、全例で下大静脈径は拡張し、除水による血管内の脱水傾向は緩和され血圧維持の観点からは利点があると考えらる。
動脈閉塞性疾患などを認められない症例に対しては有効であると考えられる。
上記のサイトでは、透析において除水による血圧低下には、下肢挙上が有効であることが記載されています。
しかし一方では『受動的下肢挙上による血圧上昇は限定的』とも述べられています。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/55/2/55_84/_pdfより)
やはり透析においても、下肢挙上による血圧上昇効果は一時的なものであると言えるでしょう。
透析の場合は血圧低下の原因が除水によるものと明らかなので、『除水速度を緩める』や『ドライウェイトを絞りすぎない』などの根本的な解決を目指す対応が必要になります。
しかし実際に透析中に血圧低下をきたして、対応をするまでの間にも除水は行なわれています。『除水による血圧低下』と原因がはっきりしているので、初期対応として下肢挙上を行なう場面は多いと思います。
しかし閉塞性動脈疾患がある場合は、下肢挙上により増悪する可能性があるので注意が必要であること、下肢挙上だけでなく原因の解決を図ることが大切であるを忘れないでおきましょう。