感染症の中でも重症なものが敗血症であり、特にICU看護師は敗血症についてしっかりと理解しておきたいものです。
この記事では敗血症の看護や観察ポイントについてまとめました。
敗血症のガイドラインや敗血症の診断ツールであるSOFAスコアについての記事も併せて閲覧してみて下さい。
敗血症とは
敗血症の定義
敗血症のガイドラインでは、敗血症は「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」と定義されています。
少し分かりずらいので噛み砕いて言うと「何らかの感染が原因となって臓器が障害を受け、身体の状態が悪化した状態」です。
ここでポイントなのは「臓器障害」というキーワードです。
敗血症=感染症と理解している看護師が多いと思いますが、正確に言えば感染症により臓器障害を及ぼす疾患が敗血症です。
敗血症が怖い理由
細菌が血液の中で増殖し、毒素によって高熱などを引き起こすだけでなく、人体の重要な臓器を障害します。
例えば腎臓が障害されると排尿機能が障害される事になり、無尿や乏尿といった症状を引き起こします。
また敗血症が進行すれば、播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こします。DICは血管のあらゆる場所に血栓ができてしまい、血栓により血管が閉塞したり、本来出血を止めるはずの血小板や凝固因子を使い果たして出血傾向になってしまう疾患です。死に至る場合も多く、怖い合併症の一つです。
敗血症性ショックについて知る
ショック状態とは血圧低下により臓器への酸素供給量が低下し、臓器障害や時には死に繋がる状態です。
敗血症によって引き起こされたショックを、敗血症性ショックといいます。
敗血症のガイドラインでは「十分な輸液負荷に関わらず、平均血圧65mmHg以上を維持するために血管作動薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/Lを超えるもの」の基準を満たしたものが敗血症性ショックと診断されます。
敗血症の治療を知っておこう
敗血症の治療は感染症のコントロールと全身状態の管理となります。
感染症のコントロールとしては速やかな抗生剤投与を行います。敗血症に対して抗生剤投与が1時間遅れると死亡率が7.6%上昇すると言われています。
また感染症を引き起こす細菌の特定を行い、最適な抗生剤を選択するようにします。抗生剤投与だけでなく、カテーテル感染など、感染の原因となるものを放置すれば感染症が繰り返されるので、感染経路を遮断する事も大切です。
全身状態の管理としては、敗血症によりショック状態になれば血圧が低下し、臓器に必要な血流が維持できない場合があります。
その為昇圧剤や輸液負荷で血圧を維持すると共に、血液中の酸素濃度を維持する為に酸素投与等が必要になります。場合によっては気管挿管を行い、人工呼吸器管理が必要となる事もあります。
敗血症の看護
敗血症の看護のポイントとして早期発見、早期治療が重要になります。
敗血症の早期発見はSOFAスコアによる評価が推奨されています。SOFAスコアは血液ガスなどのデータが必要で、ICUでの使用がほとんどです。
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日本BD 感染症アラカルト:「敗血症」の定義が変わった 〜新しい定義をどのように運用するか〜より引用
SOFAスコアで2点以上の該当があれば敗血症が疑われるものとされます。
一般病棟では簡易に行えるqSOFA(クイックソーファ)による評価を行います。
①呼吸数22回以上/分
②意識レベルの低下
③収縮期血圧100mmHg以下
上記のうち2項目に該当すれば、敗血症の可能性が高く、さらにSOFAスコアを用いて評価を行います。
qSOFAは看護師でも行える評価なので、敗血症の早期発見には重要な評価となります。
担当患者さんに異変があれば、qSOFAに該当するか評価する事も必要になります。
迅速な抗生剤投与
敗血症の治療の部分で述べましたが、敗血症に対して抗生剤投与が遅れると死亡率が上昇します。
看護師は抗生剤の投与指示があれば速やかに、かつ確実に抗生剤投与を行うようにしましょう。
また感染の原因菌を特定する為に、血液培養や痰培養など各種検査も速やかに行うようにしましょう。
敗血症の看護問題と看護目標
問題点は敗血症により循環動態が不安定になり、ショック状態を引き起こす可能性があります。
看護目標は敗血症に対し早期治療が行われ、全身状態を管理することで臓器障害や全身状態の悪化なく経過できる。
といった感じですね。
敗血症は早期発見、早期治療、全身状態の管理という点が看護のポイントとなります。
敗血症の観察ポイント
感染徴候の有無
発熱、悪寒、ルート刺入部(発赤や腫脹の有無)、皮膚状態(褥瘡や蜂窩織炎など)。
バイタルサインの異常の有無
血圧→血圧の低下は無いか、平均血圧は65mmHg以上か。
脈拍→頻脈は無いか、脈は触れるか。
呼吸→頻呼吸は無いか(22回/分はqSOFAに該当する)、呼吸様式は正常か、SPO2の低下は無いか。
ショックの兆候は無いか
末梢冷感、皮膚の浸潤、チアノーゼ、脈拍の触知を観察します。
ショックの兆候があればすぐに血圧を測定し、医師への報告が必要になります。
臓器不全の兆候
腎不全による乏尿や無尿、凝固異常による出血傾向(歯肉の出血など)や皮下出血の有無を観察します。
採血結果
炎症反応(CRP、白血球)、出血傾向(血小板)、培養の結果なども観察しましょう。
まとめ
・敗血症は臓器障害やDICを引き起し、敗血症ショックになれば生命の危機となる
・敗血症に対して抗生剤投与が1時間遅れれば、死亡率が7.6%上昇する
・SOFAスコア、qSOFAを用いた敗血症の早期発見、早期治療が大切
敗血症の早期発見には看護師の観察が重要です。看護師によるアセスメントも大切であり、qSOFAは簡便で使いやすいので、看護師がスクリーニングし医師へ報告することで早期発見・早期治療が行えます。
血圧低下を伴う敗血症性ショックでは、抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率は7.6%上昇すると言われており、敗血症の早期発見において看護師の役割は大きいです。